恵比寿ガーデンシネマでリンチに酔う
遅ればせながらデヴィッド・リンチ師匠の「インランド・エンパイア」を拝見させていただきました。冒頭の疾走するレコード針とノイズからいきなり強烈なテンションで「うわこりゃ凄そう」と思ったわけなんですがホントに凄い3時間のリンチワールド全開。私はもちろんリンチ信者なので大満足というか思いっきり毒にやられて大充実でした。いやもちろん1回見ただけでは(というか何度見ても)ワケわかんないのですが、決してデタラメをやっているわけじゃなくて、それぞれのシークエンスは非常に濃密だし、色彩感の使い分けも見事、サウンドトラックも最高。照明の使い方とか、現実と虚構(というかそれぞれの世界)をつなぐドアや階段の効果的な使い方にはホントに痺れました。
しっかしよくもまぁーあれだけ劇中劇を複雑怪奇に絡ませ、しかも時間も空間も酔うほどに入り組ませたものです。その一方で「あまり考えずに撮影したものを編集した」というのが本当なら、強烈な既視感を伴うそれぞれのエピソードの配置具合はまさに天才。で、わかりにくいんだけど、軸になるストーリーそのものは「なんだかどんどん困ったことになっていく人」というリンチ節そのものなので、それを楽しめれば退屈はしないんじゃないかな。なので、個人的にはエンドロールの何だか大団円な開放される感じはなくてもよかったと思ってしまいました(いぬいぬ氏はあそこが良かったみたいだけど)。ま、とにかくあのリンチのグルグル騙される酩酊感が好きなんですよ。リーガルなイリーガル・ドラッグって感じ。今回はちょっと、これまた私の大好きなタルコフスキーの「鏡」を思い出してしまいました。
ひとつ面白かったのは、全編を民生用とさほど変わらないようなソニーのDVcamで撮影したということ。たしかに独特の質感になってまして、低照度のシーンではAFがフラフラ迷ったり(ていうかAFで撮影してんのかよ!)、近接撮影のおばはん顔アップでは(わざと)フォーカスが来てなかったりするんです。レンズの歪曲収差もパンするときに柱がグニャっとするので思いっきり体感できる(笑)。にゅーっと動くズームとか解像度が低いのもおかしな感じなんですが、これが何ともたまらない映像になってるんだから凄いなー。ブローシャーにはリンチ師匠がモニター用のヘッドフォンを付け、カメラを持っている写真があったんですが、これがムチャかっこよかった。うーん、リピートしたい(が、健康な時じゃないと自信がない)。
ちなみにご飯は時間がなかったこともあって、ガーデンプレイス内の「武蔵」さんにて。しつこさが全くなく、非常に上品なとんかつで大変おいしゅうございました(演歌調のとんかつが好きな人には物足りないかもしれないけど)。個人的に嬉しかったのは、塩で食べさせてくれるところ。ソースももちろんいいんですが、おいしいとんかつは塩で食べたいんですよね。んで、ここのとんかつはなぜかロースが非常においしくて、あえてひれかつをオーダーする必要もない感じ(笑)。「塩でロース」がおすすめのお店だと思います。いやもちろん、ひれもおいしかったですよ。
@ぷなぷな
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